6 「8」は危険!

 私は「8」という秘儀を、あえてこの場で発表しているわけですが、これは率直に言って、太極拳の初心者にとっては、大変危険な知識かもしれません。私は、何とかものにするまで、8年かかりました。

 私が「8」に気づいたのは、’88年に上海出身の愈老師に陳式太極拳新架式を学び始めて2年目のことでした。
 ある日、代々木公園で愈老師から個人指導を受けているとき(その日は、数名のいつものメンバーは全員練習を休んでいました)、私は、「先生、太極拳の基本パターンは8でしょう?」とずっと考え続けていたことを質問してみました。

 そのとき、愈老師は振り返って私の顔を見て、「え?もうわかったの!」と、驚いた顔をしましたが、その質問に対して、「Yes」という変わりに、「ほかのメンバーには言わないでね」と早口で言い、少し考えて「それだけじゃないよ・・・」とぼそりといって、その話は打ち切りになりました。その老師の受け答えで私は、「間違いない」という確信を得ました。

 そのとき、どうして「ほかのメンバーには言わないで」と私に釘をさしたのか、そのときはわかりませんでした。そして、私は、「8」にこだわって自己流練習をで行いました。

 それまで愈老師から習った83勢の套路に「8」の理解を入れようとして悪戦苦闘しました。せっかく習った形は崩れてしまいました。老師から何度も「8はやめたほうがいいよ」と言われました。しかし、私はやめませんでした。

 かなり長い年月、私の頭の上には「8」がぶんぶん飛び回っていました。たしかに「8」では始めも終わりもなくエンドレスなので、正しく始めと終わりを区切らなくては体得することは不可能です。私は、可能なかぎり間違えました。・・・・結局最後にひとつの方法が残されました。

 「8」を体得するには、実は太極拳に関する基本的な理解が必要です。(その基本的理解に関しては、この陰陽の章に続く木の章、火の章、土の章、金の章、水の章で、それぞれ、動物の動作で説明を加えていきます。「8」のパターンは動物の動きでエンドレスに練習するとわかりやすいのです。)

 あなたがもしも、私がこの文章で説明しただけで理解できれば、あなたは、それだけ深く太極拳を学んでいる、ということになります。しかし、もしも自分で考えてどうしてもわからないが、何とか「8」を学びたいと思う方は、個人的に私にコンタクトしてください。