7 虚歩と弓歩

 虚歩と弓歩の移動は、太極拳の套路のなかに何度も出てきます。鹿を学ぶのはこの移動を学ぶことであるといっても過言ではないでしょう。

 「虚歩」とは、体重をかけないほうの足をさします。ですから、「左虚歩」とは右足に100パーセント体重をかけ、左足に体重がない状態です。

 虚歩には、3つの種類があります。

1 体重を乗せない足(虚の足)のつま先が、地面について踵が浮いた形、
2 逆に踵が地面についてつま先が浮いた形、
3 足裏全体が地面についた形。

 弓歩は曲げたほうの足に体重を6分かけ、伸ばしたほうの足に体重を4分かけます。「左弓歩」は、左足に体重を6分乗せた形です(ただし、これは、呉式のような流派によっては片方の足にほとんど100パーセント体重をかけますから、一概には言えませんが)。

 
 左虚歩から左弓歩に
 左虚歩から左弓歩に変化するときには、まず、十分に右足で地面を蹴る意識が必要です。といっても右足は体重を支えているわけですから右足で動くことは出来ません。ではどうすればいいのか?

 体重を支えていない左足で動作を作ります。まず、左足のつま先を持ち上げ、その力によって左足の付け根を後ろに引くのです。 するとその腰のひねりは、支えた右足に力を与えます。右足はちょうど、たわめた板バネのようになります(イラスト1・2・3)。このとき、先ほど練習したPC筋と腹直筋の引き締めも同時に行います。

 力を与えられた右足は、次にゆるみながらゆっくり伸びて、体重は右足から左足に移動します(イラスト4・5)。
 こうして左虚歩から左弓歩になるのです。
イラスト5 イラスト4 イラスト3 イラスト2 イラスト1
アニメーション1

 左弓歩から左虚歩に

 次に左弓歩から左虚歩になるためには、体重は左足に乗っていますから、自由に動ける右足から運動が起こります。このときも同様に右足で地面をけり、PC筋と腹直筋の引き締めを同時に行います。その結果、左足は板バネになり、ゆるみながらゆっくり伸びて体重は右足に移動するのです。

 
イラスト10 イラスト9 イラスト8 イラスト7 イラスト6
アニメーション2

 こうした体重移動を繰り返し練習しましょう。これが、太極拳の功夫(クンフー)を養成するための秘訣です。