はじめに エピソード1
 しかし、私の悪戦苦闘は、その時から始まりました。それは、8が套路の動作にどう生かせるか、8をどう区切ったらいいのか、8に関して、師匠はまったく教えてくれなかったのです。私が質問すると、「見て!」と言って、何度か動作を見せてくれますが、決して、「図形」を描いて、詳しく説明してくれることはありませんでした。

 仕方なく私は、一人でなんとか、動作の中に8を入れようと頑張ってみたのですが、8を考えれば、動作の形が狂ってしまい、形を追えば8がなくなり、ほとんど8年間、私の頭の周りには四六時中、8が飛び回っていました。そのころの私の練習風景をVHSビデオに撮って記録していますが、見るからに不恰好で、恥ずかしくなってしまいます・・・

 そうです、8こそがまさに蛇なのです。
 突然に「蛇」といっても、わかる人以外はわかりませんね。
 それは黄色い本(「誰にも聞けない太極拳のなぜ?」)の中に書いたことがありますが、太極拳の創始者とされる張三峯の伝説的な言い伝えに基づいています。
 ある時(宋の時代であるとも、元の時代であるとも、明の時代であるともいわれています)、武当山で修行をし、陰陽太極の理を究めた張三峯道士が、庭先で鶴と蛇(または孔雀と蛇、あるいはカササギと蛇)が争っているのを目撃しました。
 鶴は羽を広げて旋回しながら円形の動きをとり、蛇はその尻尾を、首の動きに合わせて攻防しました。その時の鶴の羽ばたく姿と蛇のからみつくように動く形から、柔が剛を制し、静が動を制する原理を悟り、その後、太極拳を編み出したという話です。
 さあ、あなたはこのお話をどうとらえますか?張三峰が太極拳を創始したのかどうかということに関して、いくら議論したところで、大した意味は見出せません。それよりも、鶴に絡まる蛇というイメージが、とても大切な「メッセージ」を持っているのではないかとは、あなたは思いませんか?私はそう考えます。
 「鶴」とは、太極拳のすべての「勢(せい)」です。「蛇」とは「力」です。それを「勁力」と呼びます。
 太極拳の動きに熟達してくると、その人自身が鶴になり、その表演者の手足に絡まりつくような「蛇」が現れるのです・・・・と、「黄色い本」のなかで、このように蛇について発表しました。
 しかし、この8という蛇は、強力な毒を持っています。まだ、一年以内の初心者で、太極拳の形を覚えきれていない人や、大会に出場することを目指して、形の正確さだけを練習している人には8はお勧めできません。
 この蛇を手なづけるためには、私の説明をよく読んで、一歩一歩、着実に練習を積み重ねていかなければいけません。
私は師匠の動作に「蛇」を見てから、もう25年が経過しました。長年悪戦苦闘した「8」について、詳しく説明して、現在私は、その安全な練習の仕方を発表することができるようになりました。私はインターネットに、ホームページを運営しています。太極拳・気功に関する私の考えを発表する場としています。また、私の本や、HPの内容を読んだあなたの、疑問に答えるための掲示板も用意しています。
 さあ、あなたも、この本を手掛かりに8の字の「蛇」を体感し、手なずけ、育てていってください。
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