第一章
  9 太極拳の種類が多い理由
 
 

 太極拳の一つの流派を作った老師には、必ずその師匠が存在します。Aは、X師匠から「X太極拳」と呼ばれる套路を受け継ぎました。

 A老師には、同期にX師匠から同じ太極拳を学んだ、二人の仲間がいました。その仲間の一一人はやせ形で思索家タイプ、または、一人は肥満体で、大らかで細かいことにこだわらないタイプ、そしてAは筋肉質で「闘争」を好むタイプです。

 肥満体でおおらかなタイプのBが、X師匠から学んだ太極拳を練習していくと、その体質にあったおおらかな表現にならざるを得ません。痩せ形で思索家タイプのCは同じ套路を、やせ形で思索家の体質に合った形に変え、筋肉質のAとは違った形になっていきます。

 長い修練の結果、この三人の太極拳の理解や動作は次第に変化していきます。

 三人はやがてそれぞれ、独自に教室を持って太極拳を教え始めます。B老師も、C老師も、X師匠から教わりましたが、同じ太極拳とは思えないほど二人の太極拳は風格が変わってしまいました。同じX流派の太極拳もこうして枝分かれしていきます。

 そして、Aは、X師匠から離れて長い自己修練の結果、個人的に理解した内容や、他の師匠から学んだ技術を套路に加え、闘争的な技術を押し出し、「X太極拳」とは外形的に異なる太極拳を「創始」することになりました。 

 A老師は新しく工夫を加えて改変したその太極拳を生徒に教えました。生徒はその太極拳を師匠の名前にちなんで「A太極拳」と呼び始めます。

 Bは形が変化したにもかかわらず自分の教える太極拳を「X太極拳」と呼びました。Cはやはり形の変わった套路を自分の生徒に教え、それに自分の名前にちなんで「C太極拳」という名前を付けました。

 こうして、同じX師匠から同じ太極拳を学んだ三人は、三者三様の太極拳を生み出す結果になり、その結果、一つの太極拳が多様な太極拳として、社会に受け入れられていくのです。

 
   
   
[BACK][TOP] [HOME] [NEXT]