25 筆で字を書くように


 さあ、いかがですか?基本功の練習を通して、これまであなたがあまり深く追求しなかった部分に気がついてきたのではありませんか。

 普段体を動かしている感覚のまま太極拳を学んでいけば、すべての形を覚えたとしても、ある頃から、お手本にしている老師の動作には程遠いということが見えてきます。

 太極拳の動作、またはその要求は「筆で文字を書く」ときの身体の動かし方、またはそのための注意点によく似ています。

 あなたは小学校で「書道」を習ったことがありますか?誰でも一度は経験しているはずですね。その授業の時、「筆で字を書く」のが得意でしたか?

 「筆で字を書く」のが得意という人は、おそらく何年も真面目に書道を習ったことのある人でしょう。まず普通は、だいたい苦手意識を持っているのではないでしょうか。

 今は、昔と違って筆で字を書かなくても、様々な筆記用具があります。マーカーやボールペン、シャープペンなど多様です。

 マーカーやボールペンで字を書く場合、これらの筆記用具は、手の動きに従い、素直に紙に線を引くことができます。ごく直接的に自分が思った通り線を描くことができるのです。

 しかし、筆を用いて文字を書くときはそう単純にはいきません。なぜなら、筆には柔らかな「しなり」があります。力を入れ過ぎると穂先がばらけてしまい、細い線を引くことができません。よく「カナクギ流」と評される文字は筆のしなりなどのデリケートさを無視して、力を込めて書かれる、修練を積んでいない筆法のことです。

 書には無視できない法則「筆法」があります。書道を習った人は「永字八法(注参照)」を学んだはずです。永という字を書く場合、八種類の筆法が重要になってくるのです。

 つまり、その一筆一筆を学ばなくてはいけません。太極拳を練習する人が、ただ外見的な形だけを見よう見まねで覚えていっても、それは薄っぺらな「カナクギ流」太極拳と言わざるを得ません。動作は力任せに行ってもそれは「拙力(せつりき)(注参照)」であり、「勁力(注参照)」をつかむことはできません。

 次の章では太極拳の一筆一筆(勁力)をしっかり理解していくことにしましょう。
 
   註 永字八法: 1側(そく)2勒(ろく)3努(ど)4趯(てき)5策(さく)6掠(りゃく)7啄(たく)8磔(たく)
    拙力: 屈筋の力に任せて行われる、力んだ、修練していない力の用い方
    勁力: 余計な屈筋の力を用いず、伸筋の力と理にかなった纏糸(抽糸)勁などの技による力の            用い方
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