エピソード3
天地の呼吸


 ここで紹介する「天地の呼吸」は最初は、私の陳式太極拳の師匠、兪棟梁老師より教わったものでした。もう今から二十八年前(1988)です。私が太極拳を習い始めて8年目のころのことです。

 それは、私が老師の太極拳の動作を見て、「8」に気づいてからしばらくたった時のことです。 ある日、私と数名の生徒が、代々木公園のいつもの練習場所で練習しているときに、兪老師から太極拳の動きのプロセスを一つの基本功として教わりました。

 老師は「8」という表現は使いませんでしたが、その動作を何度も練習するうち私は、それが「8」を体得するための「秘儀の教え」だったことに気が付きました。

 「いいかい、よく見て! 
 ハイ、イチ、頭。ニッ、おなか。サンッ、腰。ヨンッ、手!

 と言いながら、兪老師はその順番通り、両手を頭に上げ、おなかに下し、クルット手首をひねって腰に回し、そして前方に突き出す動作を何度か実演して見せてくれました。

 ただ、師匠はこのことを、私たちが学んだ8年間に、たった一度しか説明することはありませんでした。私と一緒に練習していた他の生徒は、そのことをたいして重視することなく、すぐに忘れてしまったようでした。

 しかし私は、長い間、この順番にこだわって練習し、「天地の呼吸」と命名して生徒に指導してきました。


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