予備勢の練習ポイント

  
 予備勢は「開歩(かいほ)」、つまり、ただ足を開くだけの勢です。あなたは練習で「予備勢」をさっと流して「起勢」を行ってはいませんか?この動作をしっかり理解しておかないと、あなたの太極拳はただ形だけの内容のないものになってしまいます。

 予備勢の足を横に開く動作の中に、太極拳技法の見過ごせない要素が隠れています。

 ポイントは、左足を大きく持ち上げないことです。虚領頂勁をしっかり保って、まず、右足にしっかり体重を移し、左足のかかとだけをほんの数センチ浮かします。左足の膝はまだ曲げません。そのまましばらく立っててみてください。まず、理解するために、その状態を三分簡保ってみてください。

 ほとんど周囲の人にはあなたの努力が見えません。三分たってから左足の膝関節を緩めます。左つま先が数センチ浮かんだら、その上体で左足を肩幅に開きつま先から着地させます。

 この練習は左右逆に行うこともできます。ほとんど動きのないこのような練習は、通勤の電車の中でもできますね。

 なぜこのようなことにこだわって練習しなくてはいけないのか?

 それは、太極拳の動作は一般的な表面の筋肉で動く軽い動作ではなく、深層筋(インナーマッスル)を用いた「重い動作」だからです。

 註 インナーマッスル

 表面の筋肉に隠れて骨に近いところにある筋肉です。感覚的に理解しずらく、まず、最初はその重要性に気づいて単純にインナーマッスルを働かせられるように練習していかなくてはいけません。この動作を行うときのインナーマッスルは「大腰筋」で、脊椎と大腿骨をつなぐ、太極拳運動に不可欠な筋肉です。

 この筋肉がアメリカのスポーツ界で知られるようになったのは1970年代だそうです。日本では、1990年ごろにようやくその重要性が知られるようになりました。
     
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