左顧右眄(さこうべん)

 白鶴亮翅の動作では、首を左に回したり、右に回したりしています。それはとても大切な動作です。それはむかしから「左顧右眄」と教えられます。 「左顧右眄」ときいて、すぐにピンとくる人はかなり高齢者でしょう。しかも、太極拳を長く、着実に実践している人だと思われます(それとも「タイチくん」のような太極拳オタクでしょうか?)。
 
 辞書で調べてみると、左顧右眄とは、「周りを気にして、なかなか決断を下さないこと。 他人の様子をうかがって、決断をためらうこと」とあります。 でも、太極拳を理解するためにはただそれだけの理解では不足です。 右に向くときと左に向くときはまったく意味が違うのです。

 白鶴亮翅の動作を思い出して見てください。最初の部分「起」が左顧に当たります。次の「承」が右眄に当たります。「顧」はかえりみる。「眄」は横目でちらりと見る・・・いかがですか。

 ほかの場所にも同じ動作が隠されています。たとえば、手揮琵琶です。この二つの勢はとても分かりやすいと思います。

 太極拳は別名「太極十三勢」と呼ばれます。二十四勢でも、四十八勢でも、八十三勢でもありません。十三勢です。十三を理解すればそれが「太極拳」なのです。

 では何が十三なのか・・・それは「八法五歩」八つの手法と五つの歩法を合わせた数です。

 手法、掤(ポン)・摔(リー)・ジー・按(アン)採(ツァイ)・列(リエ)・靠(カオ・肘(チュウ)、これが八法です。

 歩法、前進・後退・左顧・右眄・中定、これが五歩です。

 太極拳の長い套路の中に、「左顧右眄」の要素を発見して、理解していけば、太極拳の技術は格段に向上していくでしょう。
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