はじめに
  
 
  本書は、これから太極拳(簡化24式太極拳)を学びたいという方に向けて入門書として作成しました。また、すでに太極拳を習っているけれど、どこかしっくりこない、太極拳の動作が、呑み込めないと感じ始めたあなたのために、「太極拳再入門書」として、姿勢の注意点と、基本功の重要性を解説しています。 

 「門前の小僧習わぬ経を読む」ということわざがあります。

 一般の解釈は、「お寺の前の良い環境の中では、読経の声を毎日聞いているために、知らず知らず子供でもお経をそらんじてしまう。環境は大切なんだなあ」という意味になるのでしょう。

 しかし、わたしは、別の解釈をしています。

 「どんな道でも、その道を進んでいこうと思ったら、まず「入門」しなければいけないのに、あの子供(修行者)は、ただ形ばかりを見よう見まねで覚えてしまって、目くらめっぽうに修行の真似事をしている、ああ残念!」という意味ではないだろうかと・・・つまり、門前の小僧とは、まだ正しい道を理解していない修行者ということになります。

 「私は門外漢でして・・・」という言い方も、同様ですが、「自分はこの分野に対しては浅薄な知識しか持ち合わせていません」という意味なのです。
 何かを学ぶ場合は、必ず門をくぐる必要があるのです。

 では門をくぐる、「入門」とはとはどういう意味でしょうか。誰かの先生にパイスーしたり、どこかの団体に入会することでしょうか!?

 そうではありません。ある道を進もうとする人が、その道を進むために必要な最低限の知識を与えられるということです。もしもそれが一人の先生でも、団体でもかまいません。

 確かに正しい知識を持った「老師」の弟子になるのが一番無難でしょう。私も何人かの老師の教えの門をくぐって、一歩一歩育てられてきました。そして、その体験に基づき、あなたが太極拳の門を正しくくぐって成長していけるように、必要最低限の知識をまとめて、この教科書を作成しました。

 では、この本を読むことだけで太極拳の入門を果たせるでしょうか?

 ・・・まったくのゼロからの志願者に対しては、私が考えるに、この太極拳入門を読むだけでは、正直、むづかしいと言わざるを得ません。やはり生きた先生が必要です。

 この入門書は、それぞれの太極拳学習グループの教科書として採用していただき、まったくの初心者は、身近な先輩と一緒に学習を進めていけばいいでしょう。

 ある年月、太極拳の練習をしていた人で、「大切なポイントを自分はまだつかんでいない」、と気づいた人には、この本を読むことで、確かな「気づき」と、正しい門をくぐるためのHOW  TOを理解していただけたら幸いです。
 
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