1 太極拳上達を目指して


 新しく始まったこの連載で、太極拳動作をどうすれば深く理解でき、上達することができるのか、その考え方と実践法を解説していきます。一言で「太極拳」といっても、実に多くの種類の套路がありますが、主に、ここで取り上げる太極拳は「簡化24式太極拳」です。
 
 「なんだ、簡化太極拳かー」という声が聞こえてきそうです。一般的には「簡化式太極拳」は入門套路という位置づけです。「健康体操」としての意味しかなく、伝統太極拳の武術的要素を取り去った「骨抜き套路」であると多くの人に理解されていますが、私はそのようなとらえ方はしません。「簡化太極拳」は内容を正しく理解すればそのままで完ぺきな「武術」なのです。動作の中に隠れている「法則」を掴むことで、古式太極拳にグレードアップさせることだってできるのです。

 陳式太極拳こそが太極拳のルーツで、素早い動作や、発勁や化勁や纏糸勁など、武術的要素が完備され、それ以降に生まれた流派はその要素が次第になくなっていったものだとか、逆に、陳式太極拳以降に作られた流派こそが内家拳としての太極拳で、陳式太極拳は炮捶(ほうずい)と呼ばれ、太極拳とは呼べない下等な武術であるなどと説明する諸説も、あまり意味がないのではないかと考えます。ウルトラマンとスパイダーマンの強さを比較して何になるのでしょう。

 套路や流派を比較しても何の意味もありません。套路とは外套のように実践者が身にまとうものです。それぞれの流派は創始者から代々受け継がれてきた教えのカプセルです。それ以上でもそれ以下でもありません。要はあなたが太極拳に、どう向き合い、どう理解し、体得するかが重要なのです。

 私たちは一度、ピュアな視点で太極拳をとらえなおしてみる必要があるのではないかと考えます。


 
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