エピソード1  8は危険



 1890年ごろ、私は必死になって、「8」を套路にどう生かしていくのか、理解しようと悪戦苦闘していました。太極拳の動作は8が基本パターンであると理解はしていたのですが、しかし「8」のどこが出発点なのかわかりませんでした。「8」の左回りと右回りの接点である中心から動き出すのか、それとも上からなのか、下からなのか、とにかくあらゆる方法を試してみました。

 そのうち「ワタナベ(私の本名)さん、「8」はまだやめたほうがいいですよ。」と愈さんからたびたび注意を受けるようになりました。それでも止めない私に「それは十年早いよ」と本心から忠告してくれたのですが、「8」が頭から離れることはありませんでした。

 私以外に、5名のメンバーが愈老師から陳式太極拳を学んでいましたが、彼らは素直に愈老師の動作をそのままコピーして練習していきました。

 メンバーの一人が私の動作が少し変だと何度か、忠告してくれましたが、私は頑なに8の練習をやめることはありませんでした。結局、長い間、私はありとあらゆる間違いを犯し続けました。8は蛇です。蛇は毒をもっています。蛇を捕まえるには、それなりの知識と技術が必要で一定の段階を踏まなくてはいけないのです。


 
   


 
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