鶴と蛇と太極拳
承の章

 
 4 「気」はどこにでもある

 

 「『気』は天にもあり、地にもあり、森羅万象は気によって成り立っている」と、古くから教えられています。「気」は、目に見ることができませんが、私たちの周囲に遍在しています。

 魚は水の中で生きています。水の中以外に生きる場所はありません。しかし、魚はおそらく「水の存在」に気付いていないでしょう。

 私たちはその魚を笑うことはできません。人間も、「気」の海の中で「気」の恩恵を受けて生きているにもかかわらず、「気」の存在に気付いていません。

 「気」は見えなく、感じられないだけに多くの誤解を生みます。

 「気」を宇宙エネルギーなどと呼ぶ場合もありますが、そう呼ぶとどこか特殊なもののような、またおどろおどろしい感じがあります。そうではありません、もっと当たり前のものです。

 とはいっても、常識的な感覚ではどうしても信じられません。

 たとえば、何か物がなくなった場合、たとえば、ペンをどこかに置き忘れたとします。「ペンをどこに置いたのかな」と探しますね。

 「気」はどこにあるだろうと探す必要はありません。ペンをどこかに置き忘れたとすると、探して出して見つけなければ、ペンはなくなってしまいます。しかし「気」は、探す必要がありません。どこにでもあるからです。

 しかし、私たちの体は、その空間に遍在する「気」と同じものを、充電器のように体の中に濃縮化して保持しています。そしてそれこそが生きる力、「生命力」なのです。
 
 

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