鶴と蛇と太極拳
承の章

 
 3 なぜゆっくりか

 

 ゆっくり動くもう一つの理由は、「気」を呼吸するためです。どんな動作でもゆっくり動くことにより、周囲の空間に「気」の存在を実感できるようになります。逆にいえば、周囲に「気」のエネルギーを実感できるようになると「ゆっくり動きたくなってくる」のです。

簡化二十四式太極拳の套路は、一通り表演するのにだいたい五分でできるように作られていますが、まず、初心者はそんなゆっくりなペースではひとりで練習できません。

先生と一緒に練習するときは先生に合わせて動いていけばいいのですが、ひとりで行うとどうしても動作が速くなってしまいます。もしも、同じ簡化太極拳の套路をひとりで表演して、早くなったり遅くなったりせず、五分から六分でできるようになれば、その人は上達したといえます。

動きをゆっくりできるようになったということは、「気」がわかってきたということだからです。

形が正しくても、ゆっくりできないのは「気」が不足しているからです。逆に少しくらい動作が自己流になっても、ゆっくり動作できるようになれば、その人は上達したとみていいでしょう。

ゆっくり練習することは、太極拳独自のすぐれたトレーニング法です。

日常生活で行うどんな動作でも、ゆっくり、半分以下のスピードにして、それを繰り返していけば、自然に「気」の存在に気づくでしょう。


                                                                                                                          
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