鶴と蛇と太極拳
転の章


 7 右も左もわからない

 

 右も左もわからないという表現がありますね。ある分野に対して、全く無知であるということです。

 オギャーと生まれた赤ん坊が、少し成長して、目が開いたとき、見える世界は上と下が逆転しているといいます。カメラのレンズに映る世界が上下逆なように、赤ん坊の目には、上が下に下が上に見えているのです。

 やがて、脳がその逆転した映像を下は上なのだ、上は下なのだと自動的に修正するようになり、天地がしっかりと理解できるようになります。

 しかし、幼い子供は、ある時期まで、左と右の区別がつきにくいものです。小さい頃、右手はお箸を持つ手、左手はお茶碗を持つ手と教わったことはありませんか(もしかすると、これがわかる人はかなり高齢者かもしれませんが)?

 世界中のどの文字も、右利きの人のために作られています。ですから、左利きの人は文字を書くとき、やや窮屈な姿勢で書かなくてはいけません。


 日本や西欧の国では左利きの人も多いのですが、インドや中国では左利きの子供は、小さいころに強制して、右利きにさせるそうです。

 太極拳の動作は、身体の左右の違いに従って、作られているということです。左利きの人のためのギターはありますが、左利きの人用の太極拳の套路はひとつとしてありません。

 左利きの人も、太極拳を練習するときは、右利きの人と同じ套路を練習します。それで、左利きの人はぎこちなさを感じるでしょうか?まだ確かめたことはないのですが、決して感じないはずです。

 (この本を読んでいる左利き人ので、もし太極拳を練習している人は、ぜひ感想をお聞かせください。)

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