コズミック姿勢

人は二本の足で立っています。両足の上に胴体が乗り、胴体に両手がぶら下がり、首と頭が乗っかっている・・・と一般的には考えられています。しかし、実はそうした常識的な肉体の理解が、背骨に歪みを生じさせ、体を早く老化させる原因になっているのです。

 人間が、立ち方をより進化させるためには、ひとつ「大切な意識」が必要です。

 それは、「頭が天空から支えられている」という意識です。軽く顎を引いて頭のてっぺん(百会)が上方にわずかに引っ張られているのを感じるのです。

 なぜ、人間は二本足で立っていられるのか、その不安定な状態を維持できるのか考えたことはありますか?改めて考えてみてください。細い足で全体重をささえて立っている姿勢は不自然だとは思えませんか?

 いや、それはもちろん自然なことです。立っていられるのは、それは人間が生きているからです。人間の「生命力」が頭を上方に釣り上げているからです。三半規管があるからだけではないのです。

 長い進化のプロセスのうちに、生物の頭部は、地上から次第に引き上げられてきました。生物(脊椎動物)の進化のプロセスとは、背骨が水平状態から立ち上がっていくプロセスです。なぜなら、進化すればするほど、頭部に大切な器官が集結し、エネルギーを多く消費するからです。最初脊髄の一部だった脳は、人間になって最高度に進化しました。・・・というよりも、新皮質の脳が最高度に進化した生物が人間なのです。

 万物の霊長である人間は、「天からぶらさがっている葦(「考える葦である」とは有名な哲学者の言葉ですが)」であるといってもいいでしょう。あなたは天から操られている「マリオネット」なのです。

 犬や猫や多くの動物たちは、四つ足で、いつも地面をうかがい獲物を探して生活しています。トカゲやヘビはまさに地を這いまわって生きています。人間はそれらの動物から大きく抜きんでて、頭を空に向けて生きています。鳥のように羽ばたくことはできなくても、あなたの頭部は、不思議な浮力で支えられているのです。

 とはいっても、まだまだ人間の日常の意識は、地上二メートルの生活空間に閉じこめられています。背中を丸めて、目を見開き、ただ前方だけを見、顎を突きだし、せわしなく動き回り、一日が過ぎていくのではないでしょうか。

実践 「コズミック姿勢」

 
  1. さあ、実践してみましょう。足は肩幅に開き、リラックスして立ちます。
  2. 片方の手を頭上にあげ、親指と人さし指で糸をつまむようにします。
  3. その糸は頭頂(百会〔頭頂にあるツボ〕)につながっています。つまり、手で頭を吊り上げるようにするのです。
  4. このイメージで頭頂の百会に不思議な感覚が生じます。それはその部分に強く「気」が集まった感覚です。自然に頭は軽くなり、上に引き上げられ、背骨が伸びてきます。それはちょうど、鶴が頭をすっと伸ばしたような感覚です。
  5. その糸が天井に、天井を越えてもっと高く伸びているのをイメージして親指と人さし指の方向を上方に向けます。
  6. その感覚がつかめたら手をゆっくりおろしましょう。(慣れてくれば、もう手を使う必要はありません。ただ注意を向けるだけで十分です。注意が頭上に向くと、「気」が集まり、自然に頭は軽くなり、上に引き上げられ、背骨が伸びてきます。)
  7. 次に、会陰に注意を向けます。会陰を引き締めて、その辺りに重さを感じましょう。お尻が重いと感じます。すると自然に膝が弛みます。膝をわずかに曲げます。
  8. しばらくこの状態で立ってみましょう。すると頭頂から会陰に伸びた糸(中心軸)があるのが感じられてくるでしょう。
 いかがですか?この実践法を続けてみてください。終わった後にはとても気分が爽快になり、姿勢がよくなっているはずです。
イラスト16
イラスト17

アドヴァイス


 もしも頭頂の感覚が分かりにくい人は、上に持ち上げた手のひらで頭のてっぺんを10〜20回ほど軽くたたいて下さい。すると、その刺激によって頭頂部(百会)が開きます。頭のてっぺんがスースーするような、または引っ張られるような、圧力感のようなものが感じられたら、その場所に注意を軽く向け続けます。それだけでもいいでしょう。


 [BACK][TOP] [HOME] [NEXT]