「気」のボール


 「気」のボールとは意念で作り上げる「気」の固まりです。「気」は意念で練り上げ、「物質化」させることができるのです。

 もちろん物質化といっても土や石や金属のように形のしっかりしたものではありません。しかし、それは感覚で感じとることができ、体内に取り入れると肉体にハッキリした影響を与えることができるようになります。この実習は、「気」の能力を発達させていくための基礎といえるものです。

 目を閉じてみましょう。するとこれまで見えていた前方の景色が消えます。そして自然に、それまで前方にだけ向けられていた「注意力」が後ろにも横にも均等に向けられるようになります。目を閉じることは逆説的ですが、注意力を鋭敏にします。

 「注意力」とはなんでしょう。それは、「知覚」の基礎になる意識の力です。

 人は目があるから物が見えるのではありません。目という感覚器官を通して得た情報を注意力がとらえたとき、それが「視覚」という知覚になります。目が開いていても注意力がなければものは見えません。まさに「心ここにあらざれば視れども見えず」です。

 逆も言えます。目を閉じていても、「注意力」が働いていれば、「知覚」は働くのです。知覚は心の想念を感じ取る力でもあります。注意力は、外界に向けるだけでなく、心の中に向けることもできます。注意を心の中に向けることによって、自分の心のはたらきを知覚することができるわけです。

 まずあなたは、一個のリンゴを見ます。リンゴは目の前にあります。あなたの注意力が目を通してリンゴの形をとらえたのです。それが肉眼を通しての視覚です。目を閉じれば、その目の前にあったリンゴは視界から消えてしまいます。では視覚という知覚力は目を閉じてしまえば得られないのでしょうか?いいえ、あなたがそのリンゴを思い出そうとすれば、視界にリンゴを浮かべることができます。そのリンゴのイメージ像をあなたは自分で作りだし、そして自分で知覚したのです。

 さあまずリンゴをイメージしてみてください。あなたが知っているリンゴです。

 リンゴが今あなたの心のスクリーンに映っています。そのリンゴを上から見てください。下から見てください。縦に真っ二つに切ってみましょう。その切り口を見てください。

 それではリンゴをまたもとの状態に戻して、今度は横から二つに切ってみましょう・・・

 さて次に、リンゴがあなたの頭の周りを飛び回るとイメージしてみましょう。これは、単なる心のスクリーンの平板なイメージではなく、空間に対してイメージを投射することを意味します。空間に投射したときは、リンゴというよりも、「気」のかたまりとして、「気のボール」として単純にイメージしてもいいでしょう。

 今、目の前にリンゴ(気のボール)が浮かんでいます。右斜め前、右横、右ななめ後ろ、真後ろ、左ななめ後ろ、左横、・・・こうして頭の周りを一周します。すると頭の周りに何か圧力感のようなものを感じるようになります。

 さらに、リンゴを頭頂に乗っけてみます。そしてそのまま、そのイメージを数分保ってみてください。
 
 数分もすると頭頂が膨らんだような感覚が起こってきます。そして、次第に気のリンゴは頭の中に溶けこんで降りてきます。それから、頭からのどに、のどから胸に降りてきます。下ろすときのコツとして、右回りにリンゴが回転しているとイメージすればいいでしょう。最後にリンゴを胃の中に納めてみましょう。

 あなたはリンゴを丸ごと食べたことになります。こうした実践は、あまり深刻に考えず、遊び気分で試してみてください。

 視覚化の能力は、幼い子どものころは誰でも当たり前に持っているものですが、大人になると衰えてしまう傾向にあります。しかし心配ありません、いったん衰えた能力も、こうして訓練することによってまた甦ってきます。そしてさらにその能力を発達させることができます。こうした訓練もコズミックダンスの大切な要素なのです。

 
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