亀の呼吸の秘儀

 この物語には実は深い意味が隠されています。古い文献のお話というのは、単純に理解できる内容と、その裏に必ずもう少し深い意味が隠されているものと推理をはたらかせる必要があります。

 鶴や亀、鹿、熊 、etc.といった動物には、それぞれに意味があります。

 亀とは、英語でタートルですね。タートルネックのセーターというと、本当に亀の首のようなセーターのことです。

 亀はまず、首のエクササイズをさしています。

 しかし、それだけではありません。さて、あなたに質問、「洞穴の中の亀」とは、いったい何を意味しているのでしょう。800年も洞穴の中で生き延びていた、亀と一家の話を、表面的にとらえて「ばかばかしい」と笑っていてはいけません。

 洞穴の中の亀とは、口の中の舌のことだといえば、どう思いますか?口の中が洞穴です。そして、舌を巻き舌にして「La」を発声するようにした形が、頭を上に向けた亀です。それを舌祇上顎(ぜっしじょうがく)といいます。洞穴の天井から垂れるしずくとは、そう、唾液なのです。もうお分かりですね。

 舌には、舌因神経と舌下神経が分布し、これらの神経は脊髄上部の延髄につながっています。舌を上あごにつけると、その刺激が延髄や脊髄に伝わり、脊髄につながっている自律神経を調整します。

 
 さあ、では以下のような要領で亀の呼吸を練習してみてください。できれば3分間ほどおこなって見ましょう。
  1. あごを上に向けて息を吸い込むとき、同時に舌を巻き上げ、「La」という音を出すようにします。
  2. あごを下に向けて、舌を上あごから離すとき、鼻、または口から息を吐き出します。

  この首の動作と舌の動作を同時に行うことにも大切な意味があります。ただ首だけを動かして、神経系統を調整するよりも、より効果的になるのです。

 ひと呼吸ごとに舌をそらせるようにするこの「亀の呼吸」を実践していくと、口の中に唾液があふれてきます。その唾液は若返りの妙薬です。胃の消化を助け、皮膚を若返らせる薬が含まれているのです。一杯になった唾液は飲み込みます。

 唾液がのどを通って、胃に落ちていく様子を注意深く観察しましょう。すると頭部にあった「気」が唾液と一緒に胃に下がっていくのです。つまり、気沈丹田が自然に行われるようにもなります。

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