人間はまだ立つことに慣れていない

 また、哺乳類の骨格は、四足歩行をするために作られています。背骨は、地面と平行になっているとき強いのですが、直立させると、ゆがみやすくなってしまいます。なぜなら、椎骨という固い骨と、椎間板という柔らかいゼリー状の組織が、サンドイッチのように重なっていますが、縦方向に押さえられるととてもゆがみやすいのです。

動物の場合、背中が表側に当たります。つまり、日が差す面です。それに対して胸の部分は隠れていて、裏側になります。

 人間は、胸が表で、背中が裏側になりますね。誰も背中を表だと考える人はいないでしょう。

 しかし、東洋医学では、体の前面を「陰」、つまり裏、背面を「陽」つまり表ととらえています。陰の面とは、日に焼けないほうの面です。陽の面とは焼けるほうの面です。胸の部分よりも背中のほうが日に焼けますね。人間も本来動物と同じように背中が表なのです。

 なぜ胸を表側と考えるかというと、それは人体が直立姿勢だからです。


 背中が裏側になることによって、首の後ろや、背中や腰は、緊張し、縮みやすくなり、その結果、首、肩の凝りや頭痛、腰痛が生じます。

 胸や、腹部や、下腹部はゆるみやすく、内臓は、垂れ下がりぎみになってしまいました。もともと動物のころは、内臓は肋骨によってしっかり保護されていました。直立した姿勢では内臓は垂れ下がってしまうのです。

 背骨は直立し、重い頭を支え、さらにその上体の重みを骨盤が一手に支えています。そのため骨盤や背骨にはゆがみが生じやすく、そのゆがみがさまざまな病気を生じさせていきます。

 では、病気にならない強いからだになるためには、人間も動物のように四つ足で生活すべきなのでしょうか。

 それは当然、無理でしょう。人間のように進化した重い頭は、もはや四つ足の状態では保てないのです。

 弱い腕はもはや体重を支えることはできません。もしも四つ足で一日中過ごせば、首も肩も筋肉痛で動かせなくなってしまうでしょう。進化した知能を持つ人間は背骨を直立させ、二本足で歩く以外にはないのです。

 人間はまだ、立つことに慣れていないといってもいいでしょう。

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