誰にも聞けない太極拳の疑問


第二章 太極拳はなぜ中腰姿勢?




1正しい中腰姿勢  

   

 太極拳運動の本質は中腰姿勢です。
 
 太極拳の套路は最初に「起勢」で中腰の状態になると、その頭の高さと姿勢を崩さず、最後の「収勢」まで、ずっと、中腰の状態で動いていきます。

 呼吸を乱すことなくゆっくり練習していく太極拳ですが、ゆっくり練習していくため、運動量は意外に多いのです。

 中腰姿勢は、単に足腰を強くするためのトレーニング方法でしょうか?それとも、そのような「不自然な中腰姿勢」で動いていかなければいけない理由があるのでしょうか。

 順を追って説明していきましょう。

 まず、この中腰姿勢は「不自然」ではありません。というよりも、この姿勢こそが人体にとって自然な姿勢でもあるのです。

 多くの太極拳実践者が、この中腰姿勢をうまくとれないで、あるひとは姿勢が高すぎ、ある人は姿勢を低くする代わりに前傾姿勢になり、またある人は低すぎて無理をしています。それは、姿勢に関する根本的な理解が欠けているためです。

 ただ膝を曲げて姿勢を深くとればいいわけではありません。がむしゃらに膝を深く曲げて低い姿勢で練習しようとすれば、膝を壊してしまう恐れもあります(太極拳歴が長い人に膝を壊している人が多いそうです。大会を目指して練習する人に向かって、団体のリーダーが、「膝を壊すのは当たり前、膝を壊すほど練習して一人前」と教える、ということを聞いたことがあります)。これは無視できない問題です。

 膝は曲げるのではありません。「たわめる」のです。この違いはとても大きいのです。

 
「正しい中腰姿勢」は太極拳の要素の六十パーセントの意味を持つといっても過言ではありません。この姿勢がすべての勢(動作)の中に含まれています。

 太極拳の動作がどれも同じように見える第一の原因は、この六十パーセントの姿勢が同じだからだ、ととらえることができます。

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