誰にも聞けない太極拳の疑問


第六章 「気」とは?




3 注意を向けると集まる  

     

 
 
 「気」は注意を向けると、注意の向いた場所に集まるという性質があります。

 たとえば、両掌を胸の高さに固定して、片方の手に注意を向けます。右手のひらだけを目で凝視します。そのままの状態を、三分間保ちます。

 すると、右手のひらの表面に何か感じられませんか?おそらく、左手に比べて右手のほうに、ジーンとするような、はれぼったくなったような感覚が生じてくるでしょう。また、右手のひらが左手に比べて暖かくなってくるでしょう。

 それは気のせいではありません。実際に測定してみれば、右手の温度が何度か上昇しているのがわかるでしょう。これが「気」のはたらきなのです。
 
 まず、右手に注意を向けると、右手に「気」が集まってきます。「気」の集まった掌の細胞レベルでの働きが活性化されます。その結果、指先にある、普段は働かないでいる不活動毛細血管が浮き出てきて、血液が流れ始めます。

 末端の毛細血管の血流によって、血液循環が活発になって、その結果掌が暖かくなってくるというわけです。
 しかし、私たちは普段、目を開き、注意を外界に向け、せわしなく日常生活を送っています。注意が外界に向く限り、「気」が体の中に取り込まれることはできません。

 最近の若い人の中には体温が一般人のように三十六度五分ではなく、三十五度とかの人が少なからずいるそうですが、そういう人は、全身の「気」のエネルギーが不足しているとみることができます(実は著者の私も、若いころは手足が冷たかったのです)。


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