誰にも聞けない太極拳の疑問


第九章 「簡化24式」は初心者の套路?

 

9 どちらがやりにくい? 

 
 太極拳の初級クラスの教室でよく私は、「みなさん「左野馬分ぞう」と「右野馬分ゾウ」を練習してみて、どちらかやりにくいほうはありませんか?」と生徒に質問することがあります。

 するとほとんど全員の生徒が「右野馬分ぞうがやりにくい」と答えます。

 套路の中に左野馬分ぞうは二回行なうのに対して、右野馬分ぞうは1回しかありません。長年簡化太極拳を練習しているあなたは、それがなぜだろうと不思議に思ったことはありませんか?

 定式を見てもその違いがはっきり表れています。左野馬分ゾウの定式のとき、ヘソは進行方向に対してやや右斜め方向になっていますね。それに対して右野馬分ぞうの場合、同じ角度にへそを向けてはいないのです。イラストをよく見てください。

 このことについて私は、私の陳式太極拳の師匠から、ごく最初のころに教わりました。もう今から20年ほど前のことです。

・・・ あるとき兪老師は、ある雑誌に楊式太極拳の老師と弟子が右野馬分ゾウの定式で立っている写真を見つけて、生徒の私たちに示し「ほら、先生は正しい形で立っているのに、生徒はだめだよね」と言い出しました。

 私たち生徒はその写真を見ても、どこが悪いのかわかりませんでした。兪老師は「ホラ、おへそを見て、方向が違うでしょう」と教えてくれました。

 その時はそれ以上の説明はありませんでした。しかし私はそれ以来、練習者のお腹をじっと観察してみました。ほとんどの練習者は左右が同じかたちで練習しているだけでした。

 このポイントを無視して練習していっても「健康太極拳」としては問題ありません。しかし、簡化太極拳を「武術」として考えるときはこのような違いが大変重要なのです。

 

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