誰にも聞けない太極拳の疑問


第十章 根本的な理解

 

2 天を支える



 「柱のエクササイズ」で理解すべき点は、手と足は「同量の力」を使わなければいけないということです。四足の動物なら体重を支えていた前足が、人間の場合、体重を支える仕事から解放されて「手」になったのですが、しかしそのため、「手」は「支える力」が退化してしまいました。

 日常生活ではもちろんそれでも問題はないのです。しかし、太極拳の練習のとき、そのような弱い手では、ただ形だけの動作なので上達することができません。それらしく動けても「力」のない腑抜けな太極拳のままで終わってしまいます。
 
 進歩するためには、「支える力」を認識して「身体感覚」をとらえ直さなければいけません。

 足が「地を押さえ」ているのと同じように手は「天を支える」意識を持つのです。つまり、何か重いものを支え上げているという感覚です。

 するとまず、右手と右足が「柱」のように感じられてきます。掌の「労宮」と足の裏の「湧泉」を垂直軸が通ります。ただそれだけを左手と左足でも練習してみましょう。全身が映る鏡があれば、その鏡でできているかどうかチェックして、次に鏡を見ないで「感覚」だけでそれができるかを試してみてください。

 それから二番目のエクササイズに移ります。二番目のエクササイズのときには、まず、右手を持ち上げ右手と右足で「柱」を作り、次に体を左に回転させ、左足を持ち上げます。この左足を持ち上げる力は、柱を中心に「回転」することによって得られることを確認しましょう。

 次に左足を一歩踏み出し、「体重移動」を行います。体重が左足に「百パーセント」乗せるようにします。すると支え上げていた右手は「左足の湧泉」の真上に来ます。

 さあ、次に左手を支え上げ、左手の「労宮」と左足の「湧泉」に柱が突き刺さるようにします。そして持ち上げていた右手は左手をなでるようにして下ろしていき、体をしっかり右に回して、左足を持ち上げます。

 套路の練習ではこのような極端な動作はほとんどありませんが、これを練習することによって、手足の中に何か不思議な力強さが流れ始め、各勢の動作の意味がわかり始めてくるでしょう。
 

★まず、右手の労宮と、右足の湧泉が垂直線でつながる。

★体重を左足に移したときは右手の労宮と左足の湧泉が垂直軸でつながる。
イラスト12 イラスト13

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