第一章
  3 伸筋と屈筋 

 
  
 「伸筋」は、「屈筋」とセットで働きます。腕を曲げる時は「屈筋」が収縮して、その力で腕が曲がり、腕を伸ばすとき「伸筋」が収縮してその力で腕が伸びるのです。腕の伸筋は上腕三頭筋、屈筋は上腕ニ頭筋で、腕の曲げ伸ばしの時に働いています。関節の周りには、常に屈筋と伸筋がペアになって付いています。筋肉は縮むときに力を出せますが、伸ばすときには力を出せません。ですから二種類の筋肉がセットになっていないと「曲げる・伸ばす」という反対の動作が出来ないのです。

 屈筋はだいたい体の表面にあり、緊張すると力こぶになります。鍛えると肥大するのです。それに対して伸筋は骨に近い部分にあり、深層筋と呼ばれることもあり、収縮してもあまり目立ちません。伸筋を働かせているという実感があまりありません。鍛えても肥大しません。伸筋は鍛えなくても、誰でももともと強い力があるのです。

 肩こりは日本人特有の症状です。日本人は「屈筋優位」の民族であるといわれます。もともと、日本人は農耕民族ですが、鍬で畑を耕すような動作は「屈筋」が優位に働いています。同じ土を掘るのでも、スコップで土を掘って、遠くに放り出すような動作は「伸筋」が優位に働いています。のこぎりで木を切る動作も日本ののこぎりは引くときに切れるように刃が作られていますから、つまり屈筋で仕事をするわけです。それに対して西洋ののこぎりは押し出すときに切れるようになっています。つまり、伸筋で仕事をするわけです。

 私たち日本人の多くは何かの仕事をするときに、どうしても屈筋優位で行いがちです。屈筋が優位に働くとその筋肉が縮こまり、その緊張した筋肉の周囲の血液循環が悪くなり、その部分に疲労物質がたまるのです。肉体労働の後に筋肉がこりこりになるのはそのためです。

 
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