第一章
  15 気沈丹田 その1

 

 「気沈丹田」は太極拳の世界では常識です。「気沈丹田」がなければ、太極拳はただの「健康体操」にすぎません。しかし「気沈丹田」は、太極拳実践者の間に、その理解と実践が浸透しているとは言い難いのです。

 『「気」を丹田に沈める』と聞くと「腹式呼吸」のことなんだと解釈する人が多いでしょう。そう、ある意味で当たっていますが、そんな薄っぺらな理解では太極拳に応用することはできません。

 では、「気」って、一体なんでしょうか。「空気」ですか?そう、間違いではありません。でも「空気」という言葉は一般的には「周囲の空間のガス」、その代表として、「酸素」ですね。

 「酸素」を吸って「二酸化炭素」を吐くことが「呼吸」ですね。『呼吸法で酸素をより効果的に体内に取り入れれば健康になれる』という間違った理解があります。

 「酸素」は生命を維持するためになくてはいけないものですが、過剰に体内に取り込むと、必ず「毒」になります。運動不足解消に「ジョギング」は悪くはありません。しかし、過度に行えば、健康を害する恐れもあるのです。ハアハア・ゼイゼイ息を乱すような運動は若い時だけのものです。若いころはサッカーや、野球や、バスケットボールなどで、汗を流して練習しても、それほど問題にはなりません。しかし、30台を過ぎてそのようなスポーツを行うと、ストレス解消として意味があっても、健康にとっては、よいとは言えません。

 その点、太極拳は静かに運動して、呼吸が乱れることがありません。最初に学ぶときは呼吸法は教わらず、動作だけを練習していくのが一般的な太極拳練習ですが、それは正しいと思います。『この動作で吸って、この動作の時に吐く』などと教わると、必ず呼吸は過度になりがちで、よくありません。

 「気」は「酸素」ではありません。「気」は空間に遍満する「磁気エネルギー」です。「気を取り込む」というのは「充電する」ということなのです。

 
     
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