第一章
  16 気沈丹田 その2
 

 『「気」なんて、そんな見えないものがあるわけがない』と頭から否定してしまう人がいますが、物理学に少しでも理解のある人なら、私たちの周囲の空間が「磁気力の場」であるということを「否定」する人はいないでしょう。

 しかし、そんな理解を持つ人も、『「気」は「意念」と「呼吸」と「単純な動作」によって、体内にチャージすることができる』と言われると、「そんな馬鹿な…」と肯定できないかもしれません。

 それを「気功(註)」と呼びます。「気功」とは「気のトレーニング」です。太極拳の本質はまさに「気功」なのです。
 
 太極拳運動を「気功」として理解する、または体得する第一歩が「気沈丹田」です。

 では「気」を沈めるための「丹田」はどこにあるでしょう。

 丹田はお腹の中にあります。詳しくいえば、「下丹田」です。正確に説明すれば丹田には、「上丹田」「中丹田」「下丹田」があります。「気沈丹田」という場合の丹田は「下丹田」です。

 「気」は、まず、「意念」でコントロールすることができるのです。「気」は注意(意念)の向いたところに集まります。「頭」を思うと頭に、「手」を思うと手に、「足」を思うと足に集まってくるのです。

 実験してみましょう。

1 静かな場所に座って、目を閉じて、左手を左の膝に、右手を右ひざに置き、そのどちらかの手にじっと注意を向けてください。その状態を「5分間」維持します。その間、あなたは注意を向けた片手がどう感じられるか「観察」しましょう。

2 5分たったら、右手と左手の感覚の違いを感じてみましょう。

 さあ、これだけを「実験」してみてください。


 註 気功には三つの要素があります。それは「調心」・「調息」・「調身」 です。
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