第一章
  17 気沈丹田 その3
 

 注意を向けた方の掌が「びりびりするような、むずむずするような、重いような、暖かいような、ことばではっきり表現できない何かの感覚があったのではないでしょうか。

 それほど特別な感覚ではありません。ごくごく当たり前の感覚です。気功ではそれを「気感(きかん)」と呼びます。頭部を意識した時には、髪の毛が逆立つような、額の周りが圧迫されるような感覚が起こるでしょう。その感覚は、磁気エネルギーが強化された結果起こる感覚なのです。

 頭部に強く「気」が集まりすぎると「頭痛」を感じる人もいます。ですから、最初に注意を向けて「気」を集める場所は両手のひらが無難です。

 しかし、「気沈丹田」という場合は「気」の集まる場所が「お腹」なのです。ではどうすればお腹に集まるのでしょうか。

第一段階(調心)

そう、基本的にはおなかの中に意念(注意)を向けるのです。空腹のときに、おなかに注意が向くでしょう。お腹が痛い時にも向きますね。それと同じです。

第二段階(調身)

 ただ注意を向けるだけでは最初は集まりづらいものです。では、どうすればいいか。先ほど「気」を集めた方法で両手に意注意を向けて「気」を集め、その両掌をおなかの前で重ねるのです。そしてその状態を維持します。

第三段階(調息


 さらにしっかりお腹に集めるためには、それに加えて特殊な「呼吸」を行うのです。まず最初に必要な呼吸は「腹式呼吸」でしょう。まず、息を吐きながらお腹をへこませ、次に吸いながらへこませた力を緩めるのです。すると、吐くときにおなかが小さくなり、吸うときに大きくなるように見えます。無理をしないで、静かにこの呼吸を繰り返していけば、おなかに、くすぐったいような、暖かいような、突っ張るような、何かの感覚が生じてくるはずです。

 このようなエクササイズは一回だけでは意味がありません。一回の時間は最低5分、もう少しやる気のある人は10分間、毎日実践していけば、おなかの充実感をしっかり理解することができるようになるでしょう。

 お腹の感覚がわかるようになれば、太極拳練習の「裏側」が理解できるようになれるでしょう《表側は「動作(勢)」です。裏側とは「力(勁)」です》。

 
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