第一章
  21  垂らすように立つ 
 
 
 手に棒をのせて立てることはとても難しいでしょう。それを私たちは、無意識のうちになんの苦労もなくやっています。そうでなければ、私たちは日常生活を送ることができません。しかし太極拳を理解するとき、もう一つ別の要素が必要になります。

 私たちが立っている時には、別の働きもあるのです。それは「垂らす」要素です。

 今度は棒の片方を、軽く垂らすように持ちましょう。

 棒は垂直に垂れ、その状態を維持することはいとも簡単です。棒は重力の法則で地の底に向けて引っ張られているので、垂直の状態が保たれるのです。

 頭部が支えられて、首から下がこの棒のように「垂れるように立つ」こと、そんな立ち方が太極拳の姿勢で要求されているのです。

 最初それを知れば、まるで無理難題を要求されているように思うでしょう。なぜなら、棒は、指でつまんでささえれば、確かに「垂らす」ことができますが、人体は頭をどうやって支えるというのでしょう。

 「垂らすように立つ」ことを理解すること、それは大きな発想の転換です。

 
イラスト11
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