第一章

 3 伸筋優位の動作を身につける
 


 このような理解は、太極拳でもとても重要です。太極拳は「拳」を用いた動作が少なく、その代わりに「掌」が多用されます。手は五本の指をぎゅっと握るととても弱くなってしまうためです。

 よく、老師が生徒に「ハイッ、ぎゅっと握ってください」と自分の腕をつかませてその腕を振りほどいたり、生徒を軽く振り飛ばしたりという技を見せますが、それは「秘儀」というほどのものではありません。ポイントさえわかれば初心者でもできることです。

 太極拳を上達させる秘訣は、伸筋優位の動作を身につけることなのです。「推手」などの対人の練習でも、力を抜いて動くことが要求されます。 ただ力を抜いて、「腑抜け」のようになってしまうと、相手にいいように動かされてしまうでしょう。そうではなく、指先と肘をしっかり意識して伸筋を働かせるのです。これがギターと太極拳の共通点です。「虚領頂勁」「含胸抜背」や「沈肩墜肘」という姿勢の教えはまさにそのためのものです。
   


 
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