第一章
8 太極拳動作とは
 
 
 この本では、太極拳の套路について説明するよりも、太極拳の動作が本質的にどのようなものかということを理解していきたいと考えています。

 太極拳の運動は両手をだらりと垂らして直立した姿勢を「無極樁」と呼びます。この立ち方も大切な基本ですが、太極拳の動作を理解するためにはバンザイした形から理解していくのがいいと思います。

 ちょうど太陽に向かって「オオ神よ!」と両手を差し上げるような姿勢です(イラスト1)。このような姿勢をとった時、下から、つまり足先から両手の先まで、下から上に流れている経絡を「陰経」と呼びます。陰経には肝経・腎経・脾経という三本のルートがあります。

 経絡というのは「気」という目に見えないエネルギーが体内を流れるためのルートです。そう、血液の流れるルートが血管で、動脈と静脈があるように、経絡には「陰経」と「陽経」があります。

 両手の先から頭部に流れるルートは「陽経」です。やはり大腸経・心包経・胆経という三本のルートがあります。この陽経はいったん手の先から頭に上り、頭から首、胸、足と下降して足の指先まで流れています。
この陰経と陽経はつながっており、体内の「気」は上昇したり下降したりを繰り返しているのです。

 太極拳の動作はごくシンプルにとらえると、この経絡に「気」を流す動作なのです。

 「気」というエネルギーは周囲の空間のどこにでもあります。「気」の存在しない場所はありません。宇宙空間には、空気は存在しませんが「気」は充満しています。

 この周囲に充満する「気」が生物の体内をめぐるとき、「生命力」と呼ばれます。生きている生物の体内にはこの「生命力」が巡っているのです。

 まず、太極拳運動の大切な点はある不思議なパターンの動作によって、この周囲の空間の「気」を体内に強く巡らせることなのです。


   
 イラスト1    


 
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