第一章
13  雷のように

 「ダウン」と「アップ」のエクササイズが、太極拳の動作とどんな関わりがあるのだろう?と誰でも最初、不思議の感じられるでしょう。おそらくそうでない人は極々少数派でしょう。

 この法則に気づいた時、私は「たったこれだけのことに気づくためのこれまでの長い年月は何だったんだろう」と心底から「ため息」をつきました。もっともっと早くわかっていれば今頃はどんな太極拳を打てるようになっていただろうと・・・・

 このエクササイズはまるで「雷」のようです。

 雷は、夏の蒸し暑い、不快指数の高い日に発生しますね。まず青空にニョキニョキと入道雲、積乱雲が成長します。そして見る間にあたりが掻き曇り、突然に雨が降り始めます。そして、稲光とともに「ドドン!」という雷鳴が周囲に響きます。雷が止み、雨が上がると一気に不快だった大気はすがすがしく感じられるようになり、あたりにはセミの鳴き声がしみわたるように響きます。

 雷の鳴る前の蒸し暑い地表は、プラスイオンに覆われているといいます。それが不快さの原因なんです。そんな不快指数の高い日の空に「積乱雲」が現れるのです。

 積乱雲の下の部分にはマイナスイオンが帯電しており、雨で湿った雲と地表の間で、マイナスイオンが光と雷鳴とともに地表に流れます。そしてその直後、地表にあったプラスイオンが積乱雲に向かって流れていきます。

 雨の上がった地表は、先ほどまでの不快さが嘘のように、心地のいいひんやりした大気に包まれます。それは地表がマイナスイオンに覆われたということです。マイナスイオンに包まれた空気が「心地よさ」の原因なのです。

 雷は空から地上に「落ちる」だけではなく、その直後に地上から空に「昇る」のです。つまり雷には「ダウン」と「アップ」があるということです。

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