第一章
14  基本功「ダウン・アップ」の意味

 「ダウン」・「アップ」を太極拳の世界では「陽」「陰」と表現します。ダウンがなぜ「陽」なのか、というと、天から「陽の気」が降りてくるからです。私たちの身体は「陽の気」の通り道になります。天は「陽」、地は「陰」なのです。

 「陽の気」は雷のように頭から足の裏まで降りてきて地面に吸収されます。つまり、体が避雷針のような役目を果たします。そのような流れを作るためにために私たちが行うことは、両手を天に向け、体をややのけぞらせ、そして次に、お辞儀をするように上体を垂らし、ひざを軽く伸ばすことです。
 
 「陽の気」が通過すると今度は地面から「陰の気」を上昇させます。このとき行う動作は、前傾した状態から「両膝を前方に突き出す動作」で上体を起こしていくことです。すると「地の気」は地面から体の後ろ側を上昇し、胸のあたりまでまで上昇してきます。次に両手を天に向かって伸ばしていくのです。こうして「陰の気」が体の中を通過するプロセスが「陰」になるのです。

 この動作はまるで「アラーの神よ!」と礼拝する敬虔なる信徒のようですね。そうです。私の理解するところでは、昔から実践されてきた、「祈り」の方法なのです。ただし、信仰は必要ではありません。常識的に私を信頼していただき、この「行法」を実践していけばいいのです。

 この練習をするときは、これまで練習してきた太極拳の套路はいったん忘れてください。エクササイズを実践するうち、少しずつですが天地の「気の流れ」を「体感」することができるようになります。そうなれば、実践者が「試行錯誤」しながら、あなたがこれまで学んできた太極拳動作の理解を深めていくことができるのです。
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