第一章
25 [神]を降ろす

 「太極マーク」を見ると、白と黒の陰陽魚の境界線として「S」のラインが見えますね。このラインに対応して、人体は頭頂と足の裏を結んで「S」のラインを考えます。このラインに沿って、「意識」が下っていくのが「ダウン」、逆に下から上に上昇するのが「アップ」であるととらえましょう。
 
 「ダウン」は古くは「『神』」を下す」と表現しました。

 「神」は神様ではありません。古い用語では、頭の中の上丹田を「神」のセンターと呼びます。

 胸にある中丹田はそれに対して「気」のセンターです。そして腹部にある丹田が「精」のセンターです。「練精化気・練気化神・練神還虚」という教えです。

 基本は「『精』を練って『気』に変える」段階です。そのために順の「腹式呼吸」が教えられます。

 息を吸って腹部を開き、「気」を下丹田に集めます。一般には、この方法が太極拳練習に採用されています。これは第一段階、大勢の人に普及するための教えです。健康法としてみるとこの段階だけで十分です。

 逆腹式呼吸はその次の段階で、息を吸うとき、足の裏から胸にある中丹田に「気」を吸い上げ、吐く息とともに、気を下丹田に沈め、それを繰り返すことで、「気」を精妙な「神」の段階に持ち上げることができます。それが「練気化神」です。武術として太極拳を練習する時は、この段階まで不可欠です。


 正直者の頭(こうべ)に神宿るとは、古くからの教えです。「正直な人に神様が宿る」なんて、いったい何でしょうか?

 「気功実践者」の「頭」に「神」が「宿る」のです。

 そして、「気」を額(印堂)から吸い込んで、上丹田を満たし、中丹田を満たし、下丹田を満たし、足の裏まで沈めるのが、「ダウン」なのです。

 では最初は「下丹田」で「気」を集める方法から順に実践しなければいけないのか?いいえ、「ダウン」を練習することで、下丹田も、中丹田も強化することができるのです。

 
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