鶴と蛇と太極拳


 4 太極拳はなぜ中腰姿勢?


 

太極拳運動の本質は中腰姿勢です。

太極拳の套路は最初に「起勢」で中腰の状態になると、その頭の高さと姿勢を崩さず、最後の「収勢」まで、ずっと、中腰の状態で動いていきます。

呼吸を乱すことなくゆっくり練習していく太極拳ですが、そのため、運動量は意外に多いのです。太極拳の練習を始めた当初は、一時間の練習をおこなった日は、夜、体が異常なくらい疲労しているのを感じます。しかしそれは異常ではありません。それだけの運動量があったのです。そのため朝まで、深く熟睡することができるものです。

太極拳の練習者がそのような中腰姿勢で動くのを、太極拳をまだ練習したことのないあなたも、一度くらいテレビなどで見たことがあるでしょう。

では、一つ質問・・・

太極拳の動作はなぜ、膝を曲げて中腰姿勢で行うのでしょうか?(私が最初に書いた「ひとりでできる太極拳健康法(実業之日本社刊)」の中でも、疑問について簡単に説明しています)」

中腰姿勢は、単に足腰を強くするためのトレーニング方法でしょうか?それとも、そのような「不自然な中腰姿勢」で動いて行く理由があるのでしょうか。

お答えしましょう。

まず、この中腰姿勢は「不自然」ではありません。というよりも、この姿勢こそが人体にとって自然な状態なのです。

多くの太極拳実践者が、この中腰姿勢をうまくとれないで、あるひとは姿勢が高すぎ、ある人は姿勢を低くする代わりに前傾姿勢になり、またある人は低すぎて無理をしています。それは、姿勢に関する根本的な理解が欠けているためです。

がむしゃらに膝を深く曲げて低い姿勢で練習しようとすれば、膝を壊してしまう恐れもあります。ただ膝を曲げて姿勢を深くとればいいわけではありません。

この中腰姿勢の重要性を理解することが、まず最初に必要なのです。「正しい中腰姿勢」は太極拳の要素の六十パーセントの意味を持つといっても過言ではありません。


 
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