鶴と蛇と太極拳
承の章

 
 8 虚は軽く実は重い

 

 「虚」とは軽いという意味で、「実」とは重いという意味です。しかし、「虚」が弱くて「実」が強いという意味はまったくありません。
 「実の足」が体重を支えているのは、もちろん明らかですが「実の手」はその「実の足」の支える力に見合った力で、姿勢を支えています。
 それに対して「虚の手」と「虚の足」は体重を支える仕事には関係せず、全身のバランスをとるように働く手と足です。
 バランスをとる働きと、重さを支える働き、それぞれの働きにの通りに動く時、その手や足は力強い働きをします。
 「虚の手」と「虚の足」は軽く動かします。何気なく振り回した誰かの手が当たって、痛い思いをしたことはありませんか?
 よく太極拳の先生が「体を緩めて、とか、ファンソンして」と教えますね。しかし、それは、「力を抜く」ことではありません。もちろん余計な緊張やこわばった力は必要ありませんが、「支える手と足」は支えるための力が必要ですし、「バランスをとる手と足」も、そのためにしっかり力を使う必要があります。
 このようにして、正しく手と足を使って太極拳の練習をすれば、その最中はそれほどで感じなくても、その日の夜、全身がとても疲れているのを感じるものです。

 

                                                                                                                          
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