誰にも聞けない太極拳の疑問


第一章 ゆっくり動くのはなぜ?

5 緊張筋は毎日練習して維持しなくてはいけない

   

 相性筋はトレーニングして鍛えていくと、肥大します。一本一本の筋繊維が大きくなるのです。その結果、相性筋の発達した人は、体形が筋肉質になり、はっきりわかります。

 それに対して緊張筋は鍛えても肥大しません。しかし、使わないでいると筋繊維が減数していきます。

 老人がちょっとした病気になり、何週間か寝たきりの生活をしていると、その病気が治って、起き上がろうとしても立ち上がれなくなっていて、そのまま寝たきりになってしまうといいます。

 若い人でも、長い間療養生活をしていると、立つのが困難になってしまいます。

 それは、足腰の緊張筋を長期間使わないでいて、筋繊維が減数してしまった結果です。

 緊張筋は、細かい精妙な動作をコントロールする筋肉です。傘の上でボールを転がすとか、皿回しをする芸人がそのような特殊な動作ができるのは長い間の修練で「緊張筋」優位の筋肉を作り上げているからです。緊張筋は曲芸に必要なバランスを保つデリケートな調整が行える筋肉なのです。

 曲芸師は毎日練習を欠かしません。練習を休むと「カン」を失うといいます。それは、毎日練習しないと、緊張筋の力を維持できないからなのです。

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