誰にも聞けない太極拳の疑問


第一章 ゆっくり動くのはなぜ?

9 手足の虚実 

   

 太極拳の練習でゆっくり動く理由をさらに明確に表現すると、太極拳練習の大切な目的、「太極の運動」を身につけるためです。

 太極拳とは「太極」の拳です。

 太極とは陰陽のバランスです。「太極の運動」とは、一挙手一投足がバランスを持って動いていく運動です。

 太極拳の練習で、どちらの足に体重が乗っているかということは、とても重要です。体重の乗っている足を「実の足」といい、体重を浮かせた足を「虚の足」と呼びます。

 この感覚を身につけるためには、手と足の虚実の関係を理解するところから始めればいいでしょう。

 体重の乗った足が「実の足」、体重をかけない足が「虚の足」です。

 では、両手は、その「足の虚実」に対して、何か変化はあるのでしょうか?

 普段、私たちが手を使うときに、足の体重移動を考えに入れて動かすのかというと、全く無関係に動かすことが多いものです。しかし、私たちが、何か重いものを持ったり力仕事をするときには、知らず知らずのうちに、手と足が、ある協調を持って動いているのです。

 その法則は、左足に体重が乗り、左足が「実の足」になっているときには、右手が、「実の手」になります。「実の手」とは、支える手です。支える手は、「実の足」に近いところに位置します。

 それに対して、反対側の手は「虚の手」になります。

 「虚の手」とはバランスをとる手です。虚の手はバランスをとるために「実の足」から離れたところに位置します。

 これが、太極拳練習に不可欠の「虚実の法則」です。

 このような練習はゆっくり、繰り返し行わなければ、まず体得することはできません。

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