誰にも聞けない太極拳の疑問


第二章 太極拳はなぜ中腰姿勢?




3 動物と人間  

   

  
 人間は、犬や猫と変わりない哺乳類に属しています。犬や猫は四つ足です。四足動物の体は家にたとえることができます。二本の前足と二本の後足は、家の構造をしっかり支える柱です。両手と両足は均等に体重を支えています。背骨と肋骨は屋根にあたり、その背骨と肋骨に守られ、しっかりしまいこまれた各内臓はそれぞれの家具でしょう。この状態が哺乳類の体にとって自然体なのです。

 それに対して人間はその同じ構造の家の柱が横倒しになり、不自然に立ってしまったと表現することができるでしょう。

 それが、私たち人間が多くの生活習慣病を抱えている理由です。

 背骨は本来、地面に対して水平になっていたのですが、二足歩行になって、垂直になってしまいました。このような状態で生活すると、背骨の特定の骨に異常が出やすくなります。

 それは、まず、首の部分です。この頸椎の部分はイラストのように、垂直に線を引いた中心軸(中心軸とは何?を参照)が通っています。その部分に常に重い頭部の負荷がかかり、背骨が歪みやすく、それを矯正しようとその周囲の筋肉が慢性的に緊張してしまうのです。首や肩の凝りはその結果です。

 次に肩甲骨の間やみぞおちの後ろの胸椎からおなかの後ろの腰椎のあたり、この部分は逆に中心軸から遠ざかっています。頭部の重さがやはりこの部分に負荷をかけ、胸椎のずれを起こします。その結果呼吸が浅くなりがちで、心臓などのはたらきに悪影響が出ます。

 腰の腰椎は、首の部分と同様、中心軸が通っています。この部分には上半身の重さが集まり、腰椎にズレが起こりやすいのです。慢性的な腰痛はその結果です。

 そして、胴体の最下部は、内臓の重さが集中してのしかかる部分で、肛門部分は緩みやすくなってしまいました。

 動物の肛門は緩むことがありません。また、動物のころには屋根の下に、つまり背骨の下にしっかりと守られていた内臓は、支えがないので下垂する傾向にあります。胃や腸の下垂はその結果です。
 
 しかし、もちろん、人間は今さらもとの四足の状態に戻ることはできません。

 貧弱な両手はもはや体重を支え続けることができませんし、重い頭部が横になれば、首に過度な負担がかかり凝りはさらにひどくなるでしょう。




首の慢性筋肉疲労 首や肩の凝り


呼吸器や心臓などに悪影響



慢性的な腰痛

肛門部分に緩みが起こる
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