誰にも聞けない太極拳の疑問


第七章 呼吸はどうする?
 




4 逆腹式呼吸とは 


 
 肺をスポンジのように大きく動かすために、もう一つの腹式呼吸があります。それは逆腹式呼吸です。

 逆腹呼吸もやはり腹式呼吸ですが腹式呼吸との違いは、息を吸うときにお腹をへこませ、息を吐くときにお腹が大きくなるような呼吸です。ちょうど、普通の腹式呼吸と逆にお腹が使われるので「逆」腹式呼吸と呼ばれます。

 この呼吸法は肺をさらに大きく動かすことができます。普通の腹式呼吸は、肺の下部を広げるために効果がありますが、逆腹式呼吸は肺の後ろ側や側面が大きく広がります。

 どちらかというと、太極拳の呼吸法はこの逆腹式呼吸のほうで行ったほうがうまくいきます。

 中国の古い表現では、腹式呼吸は「文息呼吸]と呼び、逆腹式呼吸のほうを「武息呼吸」と呼びます。文息とはつまり、「文人(註参照)」の行う呼吸ということです。腹式呼吸は座っている時や静かに動いている時に適しています。

 逆腹式呼吸は武術を行うとき、またはやや活動的な肉体動作を行う時に、自然にこの呼吸法になるものです。つまり、「武人(註参照)」の行う呼吸であるというわけです。

 では、太極拳の呼吸は逆腹式呼吸で決まりでしょうか?もちろんそれでも間違いではありませんが、私は、もう一つ別の呼吸をお勧めしたいと思います。

 それはこの二つの呼吸を融合させた「完全腹式呼吸」です。
 
註1 文人とは、作家、詩人、画家、などの職業につく文化人のこと
註2 武人とは、武術を鍛錬し身につけている人のこと

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