誰にも聞けない太極拳の疑問


第八章 太極拳でホントに強くなれるか?
 




12 太極拳の練習は何のため?


 
 太極拳を練習する目的を、古の老師(陳金)は「陰陽開合の理を悟るため」と、一言で答えました。

 太極拳練習は「強くなるため」ではないのです。逆説的ですが、強くなるために体を鍛えた人ほどこの原理を悟るのが困難になります。

 病弱な人でも、女性でも、老人でも、この「陰陽開合の原理」に気付いた瞬間に「変わる」ことができます。もともと強い人は、この原理を体得すればさらにその威力を増すことができます。

 陳老師は著書の中でさらに、「私たちの体には生まれながらの陰陽開合があり、教えて増えたり減ったりするものではない。各々がその本来の陰陽開合を取り戻せばいい」」とも言っています。

 「陰陽開合」とは、まさに太極拳練習の目的であり、ではとてもムヅカシイことなのかというと、初心者が学ぶような太極拳動作の基礎ともいえます。

 「陰陽開合」を「起承開合」と呼ぶことも、また「起承転合」と呼ぶこともあります。流派や教える老師によって言い方が異なるのです。

 私は「起承転結」と説明しました。または「春、夏、秋、冬」と説明しました。私の考えですが、「鶴と蛇の格闘」も正にこの法則を表現したものなのです。

 この八章で紹介したエクササイズは陳老師の言う「陰陽開合の理」を悟るためのごくごくシンプルな練習法です。

 このエクササイズは、私が太極拳を学び始めた一年目に老師より教えられた練習方法をアレンジしたものです。私の老師も、仙人のような師匠から教わったと言って私に教えてくれました。

 残念ながら、その当時は、私はこのエクササイズの重要性をそれほど理解できていませんでした。それから30年たった現在、それを「私の工夫を加えたエクササイズ」として発表したわけです。

 力まないで、あせらないで何度も練習してください。
 
 
参考資料
 太極拳を学ぶには陰陽開合を学ぶべし
 吾が身中にはおのずから本然の陰陽開合あり
 教者のよく加損する所にあらざるなり。
 その本然に復せば教者すなわち止む
 教者の規矩をもって教えるは、すなわち大中至正の理なり
 
 訳
 太極拳を学ぶには陰陽開合を学ぶべきだ
 我々の体には生まれながらの陰陽開合があり
 教えて増えたり減ったりするものではない
 おのおのその本来の陰陽開合を取り戻せばよい
 手本を示して教えるのは、大中至正の道理である。
                   陳金(ちんきん)「学拳須知」より


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