誰にも聞けない太極拳の疑問


第八章 太極拳でホントに強くなれるか?
 




2 スキーと合気道と太極拳 



 太極拳を学び始めて少なくとも5年間ほどは、ただ、太極拳の教えだけを学んでいくべきです。浮気はよくありません。

 しかし、それ以上学んだ人で、もしも機会があれば、他の流派やスポーツを学ぶことも悪くはありません。

 私は五十歳のときに初めてスキーを習いました。最初にトレーナーについて個人指導を受けました。短い時間でしたが、その時トレーナーに教わったことが、そっくり太極拳の核心的な要素であることに気付き、とても感動したことを覚えています。

 ゆっくり動く太極拳の練習でつかみづらいことが、スキーで滑るうちに体得できるのです。太極拳なら少しくらい重心がブレても、ごまかすことができますが、スキーはそうはいきません。ちょっとしたブレで転倒してしまいます。

 他の流派を学ぶのも悪くないといっても、剛の武術はお勧めできません。つまり、巻き藁をついて拳を鍛えたり、激しい動作を練習するような武術です。

 確かに強くなりたい人にとって即効性はあります。ただ、太極拳がうまくなりたい人にはお勧めできません。

 そうですね、たとえば、合気道などはお勧めです。合気道と太極拳は技(わざ)によく似た点が多いのです。

 ところが、指導方法は正反対です。太極拳で長い間かけて理解することを、合気道では最初に教わったりします。もちろん逆もあります。合気道の練習者がつかみにくいことが太極拳では最初に学ぶことができるのです。

 合気道の練習は、まず、敵に手をつかまれたときにそれをどう返すかという、敵との攻防戦を最初から教わります。

 二人が交互に、技を掛けあって練習していくのです。もちろん、喧嘩ではありませんから、相手に手をつかまれたら、どう動くのかという動きの型を何度も練習していきます。

 「一手を教える」と言い方があるように、手を持たれたときにどう対応するかということが練習の中心になります。

 「合気上げ」という技は最初に教えられる一手です。敵に手を握られたときの反撃の技ですが、敵に手首を持たれた時に、持たれた手首をそらせて、敵の姿勢を崩す方法です。それを、交互に練習していくのです。

 その技は太極拳の動作の中にも多用されていますが、それに気付く人は少ないのではないでしょうか。

 


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