誰にも聞けない太極拳の疑問


第八章 太極拳でホントに強くなれるか?
 




6 鶴と蛇とは?

 私の解釈を簡単に説明しましょう。

 この鶴と蛇の格闘のストーリーは『太極拳の動作の本質が、「鶴」で表現される要素と、「蛇」で表現される要素の組み合わせである』、ということを、さり気なく教えている暗号メッセージではないかということです。

 そして、両者が争っているというわけですから、その両者は、まるで火と水のように、互いに質の異なる何かであるはずです。

 「鶴」で表現される要素とはいったいなんでしょうか?

 それは、華麗に表現される太極拳の動作(形)でしょう。特徴は、鶴のようにスッと立った背骨(上体)とはばたく翼のような両手の動きです。一番わかりやすい形は「白鶴亮翅」でしょう。

 白鶴亮翅の定式(動作の完成形)はちょうど太極マークのようではありませんか。

 では、「蛇」とはいったいなんでしょうか?

 それは太極拳の力強さの秘密である、足腰を主体にした隠れた動作のことであり、その動作を効果的に作り出すためには「ワンパターン」のリズムを理解する必要があります。

 その運動はちょうど蛇が獲物に絡み付くように、全身をリズミカルに不思議な揺らぎで波打たせます。

 ゆっくりそれを巡らせる時には、それは真綿で包むようなやわらかな動きになり、瞬時に巡らせると、それは発勁と呼ばれる強力な爆発力となるのです。

 この力に目覚めて始めて、ゆっくりと動いて練習することの大切さがわかります。そうなって始めて、その人の太極拳は本物になります。


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