誰にも聞けない太極拳の疑問


第八章 太極拳でホントに強くなれるか?
 




7 蛇行歩行


 蛇には足がありません。「蛇足」とは余計なものという意味ですが、蛇に足はいらないのです。足がなくても、前進していきます。もっとも蛇は後退することはできませんが。

 蛇はなぜ、「蛇行」するのでしょうか?「蛇さん蛇さん、あなたはなぜ蛇行するのですか?」と質問してみても、答えてはくれないでしょうが、もちろん足のない蛇が前進していくためですね。

 私たちが歩くとき、普通はまっすぐ進んでいきます。しかし、登山などで急な斜面を登るとき、まっすぐに上るよりも、蛇行しながら登るほうが楽に上れるということを、体験したことはありませんか?

 スキーで斜面を滑り降りるとき、なだらかなスロープを描いて優雅に滑降していきます。「ウワ―どいてくれ!と、止まれないんだー!」と直滑降で滑り降りるよりも安全です。

 つまり、坂を登るときも、下り下りる時も、ストレートに移動するのではなく、蛇行したほうが楽なのです。

 なんと、太極拳の前進歩も、熟達者は蛇のように蛇行しながら歩いているのです。

 すでに第三章で「中心軸を保って前進歩」のエクササイズを紹介しました。このエクササイズで重要ポイントは片足に100パーセント体重を乗せ、両手で、しっかりとそのバランスを取りながら歩行することです。

 その歩行を上空から俯瞰してみるとしっかりと蛇行しているのがわかるでしょう。

 これを「蛇行歩法」と呼びましょう。この歩法こそはすでに「蛇の動き」の影です。つまり、蛇の運動を二次元的にとらえた軌跡なのです。


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